日本に裁判員制度が導入された近い将来、初めて裁判員制度で裁判をする女性判事(29歳)を主人公にした漫画(全1巻)。5つのストーリー(事件)で構成され、それぞれの事件を通して主人公が裁判員制度の意味を判り始める過程を描く。
――――とか何とかっていう評論が、美容院で見掛けた某女性誌で紹介されてたので興味をもった。
テーマ堅そうだから青年漫画かとも思ったけど、ようやく見付けたらバリバリのレディースコミックスだった。絵とか、主人公とか、(事件以外の)ストーリーとか。まぁ、そのへんは棚に上げといて。

裁判員制度の概要を知る入門書という点では、判り易くて面白かった。弁護士の法律監修付きなので、制度の内容は正確だと思うし(制度以外の細かい描写で疑問があったけど)。法改正前に出版されたらしいので、成立した法律は多少違うのかもしれないけど。大筋、こんな感じになるんだなぁということが判る。

裁判員制度っていうと、映画とかで馴染み深いアメリカの陪審員制度みたいな印象があるけど、どうやらそれとは似て非なるものと言えそう。陪審制ではなく参審制。

一番意外だったのは、評議に裁判官が同席して意見を述べる、というか、要は裁判官と裁判員とが協力して審理するというところ。
主人公の科白にもあったけど、裁判官の意見は少なからず裁判員に影響を及ぼすわけだから(というか、実際には言いなりになる可能性が高いんじゃ?)、評議に裁判官が同席するという点で、根本的に制度趣旨がアメリカの陪審員制度とは違うってことだろう。
市民が自ら判断する、というのでなく、市民の意見を裁判官の判決に反映させるということか。
だから、量刑(例えば、実際に懲役何年にするか)も裁判員(及び裁判官)による評議対象になる。
陪審員は有罪か無罪かの判断だけで、量刑は裁判官がするけど。
確かに、陪審制よりは日本人向きと言えるのかも知れない。

そう言う意味では、評議の場で法服を脱いでみせ、市民と同じ立場で発言する、という主人公のスタンスは、ちょっと趣旨とは違うように感じた。
例え法服を脱いでも、あくまで裁判の場では「裁判官」であって、その発言の事実上の影響力に変わりはないと思うから。

それと、息子が殺人罪で起訴された事件の裁判員に母親がなりすましたという話があって、裁判員制度が始まるとこういう事件も起こるかも知れない、という気がした。
死刑判決は裁判員の全員一致が必要なので、違法行為をしてでもそれを阻止しようというのはありそう(三審制だから少し無理あるけど)。

ただ、普通に漫画としては、「家裁の人」みたく骨太のストーリーを期待してただけに、拍子抜けというか。
引っ掛かるところは多々あるけど、とは言え、手っ取り早く気軽に、裁判員制度ってどんなの?ってのに興味がある人にはお勧め。

ISBN:4088651596 コミック きら 集英社 2003/11/19 ¥420

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